波乱の展開も駒大制す、第84回箱根駅伝。
正月恒例の第84回東京箱根間往復大学駅伝競走。
2日の往路は山登りを脅威の走りで制した早稲田大学が、
12年ぶり13度目の優勝で、名門復活を強くアピールすると、
きょう3日の復路は、選手層の厚さをフルに発揮し、
安定したレース運びをした駒澤大学が、粘る早稲田大を9区で逆転。
そのまま逃げ切って、3年ぶり6度目の総合優勝を果たしました。
◆大八木監督(駒澤大)
「いい選手たちに恵まれた。
往路は思い通りトップと1分半差以内できた。
あとは信頼していた復路の選手に託しただけ。
3年前の優勝チームより力、強さがあり精神面の差がある」
(時事通信)
◆安西主将(駒澤大・5区)
「昨日はおいてかれちゃったので何とも言えない。
キャプテンとしてチームが勝てて
監督に15回目の優勝をプレゼントできたのがうれしい。
苦労を乗り越え優勝できてうれしい。
ウチのチームが1番だと思って2日間、戦い抜けた。
これで終わりではない。今年が黄金時代の始まり。
後輩たちには強い駒大であり続けてほしい」
(スポーツ報知、時事通信)
◆堺選手(駒澤大・9区)
「7区と8区の選手が詰めてきてたので
自分でトップに出たいと思って走った。
しばらくは(早大・三輪と)併走するんじゃないかなと
思っていたが、下りで仕掛けることができて
リズムに乗って行けて良かった。
(最終ランナーの)太田に楽をさせたいと思っていた。
(区間記録保持者の)塩川さんのタイムを意識していて、
ちょっと遅いと思ったので権太坂でペースを上げた。
早大が離れていったので、そこからペースを上げていこうと思った」
(スポーツ報知1、2)
◆深津選手(駒澤大・8区)
「区間賞はうれしい。
チームは併走している状態なので安心できない。
トップに追い付くことが目標だったが、
自分の力が及ばずに追いつけなくて不満だった。
堺さんの負担にならないように、もっと追いつめたかった」
(スポーツ報知1、2)
近年まれにみる超戦国駅伝という前ふれの今回の大会。
昨日の往路、きょうの復路と2日間、
スタートからずっとTVで追っていましたが、
その展開は、まさに波乱といえるもの。
さらに『箱根駅伝』の醍醐味と怖さが
ほとんど出そろったレースのように感じました。
まず花の2区の山梨学院大・モグスの快走。
7位でたすきを受けると、6人を抜き
一気にトップに立つと、その後は独走態勢。
失速した昨年の反省をしっかり生かした走りで、
区間記録を9年ぶりに更新すると、
同じく2区では、16位から3位となった東海大・伊達、
大会タイ記録となる15人を抜いた日大・ダニエルなど、
力のあるランナーのごぼう抜きも随所に見られました。
続く3区では、世界陸上1万メートル日本代表の
早稲田大のエース・竹澤健介が、区間賞の走り。
座骨神経痛などで、出場が危ぶまれたものの、
痛み止めの注射を打っての走りでも、7人抜き。
さすがなところを見せてくれました。
そして5区は、おなじみ山登り。
早稲田大の主将・駒野亮太が10キロ過ぎで、
3区、4区と逃げていた山梨学院大を抜き去ると、
併走していた駒澤大・安西をもかわし、
そのまま差を広げ、往路ゴール。
その一方で前回、『山の神・今井』で制した
順天堂大がその山でまさかのアクシデント。
5区の小野が脱水症状などから両足をけいれん。
ゴールまで500メートル地点となったところで
立ち上がれなくなり、途中棄権。
大会連覇が消えてしまうという、
明暗がくっきり分かれる結果となりました。
早稲田大、駒澤大、山梨学院大、関東学連選抜、
中央学院大というベスト5でスタートした復路は、
序盤6区で早稲田大・加藤が区間賞の快走。
上り、下りと今年の箱根の山を制した早稲田大が、
そのまま逃げ切る体勢を作ったものの、
7区では、2位・駒澤大との差が徐々に縮まり、1分差に。
さらにその7区では、東海大のエース・佐藤悠基が
3年連続区間新という快記録で6位から一気に3位へ。
優勝候補の一角がようやく出てきたかという感を見せました。
しかし8区で駒澤大・深津卓也が早稲田大を猛追。
区間賞の走りで、ついに15秒差までにとらえ、
トップを射程圏内に迫ると、
その一方で3位の東海大は、5位に転落。
早稲田大、駒澤大の2強に勝負が絞られることに。
そして9区、序盤すぐに追い付いた駒澤大・堺晃一が
権太坂の下りで仕掛けて、早稲田大・三輪を交わして、
ついにトップに立つと、その後ぐんぐんを差を付け、
最終10区へつなぐと、駒澤大のアンカー・太田が
そのまま堅くリードを守り、3年ぶりとなる
総合優勝のゴールテープを切りました。
一方で10位以内に与えられる
来年の出場権(シード権)争い。
しかし強豪校にまさかのアクシデント。
9区で11位の大東文化大・住田が脱水症状を起こし、
途中何度も立ち止まりながら必死に走り続けるも、
21.7キロ地点で走れなくなり、無念の途中棄権。
さらに最終の10区、11位・日大が10位・東洋大を追い上げ、
ついに追い付くかに見えた21キロ手前で
6キロ地点で右足をくじいたという東海大・荒川が
激痛で力が入らず、3度転倒して走行不能に。
優勝候補の一角のこまで来ての途中棄権。
予想外の展開で、日大、東洋大に
そのままシード権が飛び込むという皮肉な結果に。
大東文化大・住田は脱水症状から、
東海大・荒川は靭帯損傷ということで
往路の順天堂大とともに、史上最多の3校が途中棄権。
近年でも異例の事態になってしまいました。
全体的に振り返ると、
やはり駒澤大学の
総合的な強さを感じました。
抜きんでた選手こそいないものの、
ある程度の差でレースを
進めていれば、
いつかはモノにできる。
多少の誤差がありながらも、
しっかりとまとめられるところは
他校にはない層の厚さが
あったのではと思います。
またうまくレースを進めたのが、
往路優勝で名門復活をアピールした早稲田大に
初の4位と大健闘した関東学連選抜。
さらに9区で区間新をマークして
最優秀選手(金栗杯)に輝いた篠藤淳を擁した中央学院大。
とくに短期間ながらチームとしてまとまり、
予想外の走りを見せた関東学連選抜の頑張りは、
評価できるのではと思います。
その一方で前回優勝の順天堂大は、
ある意味、踏んだり蹴ったりの大会に。
1区で大きく出遅れると、5区では山に泣き途中棄権。
さらに8区で再びアクシデントが起こると、
10区で無念の繰り上げスタート。
山の神をはじめとする前回メンバーが抜けたとはいえ、
最後まで運に見放された大会となった気がします。
また優勝候補の一角だった東海大が
途中棄権というのも信じられなかったですね。
特に主力を復路に残していただけに
こういう結末が待っているとは…。
エース・佐藤悠基を7区に配置し、勝負に出たものの、
後が続かなかったうえに、10区の途中棄権で記録なしに。
アクシデントとはいえ、まさかという感じでしょう。
☆各チームの総合成績は以下の通り↓
<総合優勝> 駒澤大学 11時間5分0秒
(池田、宇賀地、高林、平野、安西、藤井、豊後、深津、境、太田)
(2位)早稲田大学 (3位)中央学院大学 (4位)関東学連選抜
(5位)亜細亜大学 (6位)山梨学院大学 (7位)中央大学
(8位)帝京大学 (9位)日本大学 (10位)東洋大学
(11位)城西大学 (12位)日本体育大学 (13位)国士舘大学
(14位)専修大学 (15位)神奈川大学 (16位)法政大学
(17位)東京農業大学
(記録なし)順天堂大学、大東文化大学、東海大学
時に感動、時に驚きと、
毎年さまざまなドラマがある箱根駅伝。
例年のごとく、今回もその部分を見せてもらった気がします。
ただ3区間で記録が更新されるなど、スピード化が進む一方で、
リタイアが3校出てしまう事態に、選手管理の部分にも疑問が。
注目度が高いレースだけに、その辺りも
これからの各校の課題となっていくのではとも感じました。
明日からは第85回大会に向け、
各校が新たなスタートを切ることでしょう。
個々がさらなる高みに挑むとともに
重圧に耐えうる心身を鍛えるであろう選手たち。
また来年の次回大会でもその快走で、
ファンである我らを感動させてほしいところです。